メールマガジンvol.2
2017年2月

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もっと身近にヴァイオリンの生音をお届けするヴァイオリニストの加納伊都です。

先日イタリア人の友人から興奮して、
記憶力の良くなるヘッドフォンを知っているか?と動画が送られてきました。
このヘッドフォンのことを聞くのは数回目で、ヘッドフォンの頭が当たる部分に、
電子チャージなる、ツボ押し器具のような、生け花の針山のようなものを装着し、
耳に20分当てるだけで、あら不思議、脳に電子の刺激が送られ、記憶力がアップ、
いろいろなことがすいすいと覚えられるようになるらしく、
特に音楽とスポーツの取得に特化しているとのこと、
この発明器具を最初に教えてくれたのも、ピアノが趣味のイタリア人の男の子で、
夢中になって、一日何時間も使用していたことを覚えています。
(説明書には一日何時間も使用してはいけないと書いてあったのにも関わらず)

2月末になると、ウィーン国立音楽大学にいる頃毎年のように、
ヴェニスのカーニバル(2月末から3月頭にかけて開催)を見に、
ヴェニス旅行をしたことを思い出します。
ウィーン国立音楽大学は、2月が冬休み(クリスマス休暇とは別)、
そして2月のウィーンというのは、クリスマス、ニューイヤー、舞踏会シーズンが終わり、
閑散とし何も楽しいことがないので、ヴェニスには夜行列車で一晩、
一番のローシーズン+学生割引で驚愕の旅費の安さで、
ウィーンの暗く寒い冬を脱けだし、明るく、シーフードが美味しい街での
華やかなカーニバル見学は、格好の楽しみ方でした。
ヴェニス以外にも、イタリアはオーストリアと国境を接し、
電車で飛行機で簡単に気軽に行くことができる場所なので、
演奏でも旅行でも数えきれないほど訪れ、
また伊都の伊は伊太利亜の伊だと豪語しているところでもあり・・
イタリア、そしてイタリア人にはなじみ深さ、親しみを感じています。

初めての演奏先でもイタリア人がいると、
人見知りの私でも話しかけられる相手がいることにほっとし、
楽しいことの誘いをめったに断らないので、すぐに気の置けない仲間になることができる、
よく言われるフレンドリーなイタリア人像は本当で、私は基本的に大好きです。

けれど、同時に私にとって謎多き人たちでもあります。
私が海外生活で慣れないことの一つに、
外国人は包装紙をびりびりに破くというものがあるのですが、
私の今までの出あった中で一番このびりびり度が高いのがイタリア人です。
(ちなみに次はドイツ人―彼らは包装紙に重きを置かないのです。
逆に一番きれいに扱ってくれるのはイギリス人のように思えます。
−なぜなら彼らは古いもの、リサイクルが好きだからだと思われます。)
もちろん、世間一般のイタリア像からイタリア人が、
包装紙を綺麗に丁寧に扱うとは推察されないと思われ、想定外では全くないのですが、
イタリア人というのは、これも良く言われるようにおしゃれで、きれいな包装紙が大好きで、
可愛い包装紙に包まれたプレゼントを見ると、手放しで喜び、
なんて可愛い包装紙なの!と言い、キスを浴びせながら、
次の瞬間にその包装紙をびりびりと破き、今度はプレゼントに大喜びする・・という行為、
もし本当に包装紙を可愛いと思うならそんな、無節操に破かないのでは・・
そして破いた包装紙を再度見て、本当に可愛い!とキスするなら、そんな風に雑に取り扱わなくても・・
と思う日本人は少なくないのではないでしょうか。

そして冒頭のヘッドフォンの話に戻るのですが、
イタリア人は、こういった新しいテクノロジー、特に、自分の手間が省けるものが大好きなようです。
学生時代、イタリアの田舎町ですでにどこにでもETCが設置されていることに驚きました。
にも関わらず、彼らの料理に使う手間は驚異的です。

どんなに料理が好きでなく、インスタントで間に合わせるイタリア人でも、
必ずそこにひと手間を加え、どのインスタント商品に、
どんな手間を加えると美味しいか知っているようで、
電子レンジの秒数と置きかたで出来上がりが変わることを教えられ、
だったらパスタをゆでる方が楽なのではないかと思うと、
パスタのゆで方はきちんとしないと嫌なので、それはまた別の話らしく、
ともかくそのささいな手間を重要視することこの上ないように思えます。
そうではない一般的なイタリア人の料理にかける情熱と手間は言わずもがなです。

情熱を注ぐところが違うと言ってしまえばそれまでなのですが、
包装紙の一件にしろ、そしてヘッドフォンと食べ物に対する件にしろ、
なんとなく感覚的につじつまが合わなく、謎に感じてしまうのは、
少なからず日本人的でないと評される私のキャラクターの中にも、
日本人の合理性が受け継がれているのかと
ヘッドフォンの動画を見ながら、
もちろん有効ではあるのだろうけど(そして試してみたい気持ちはやまやまだけれど)、
同じく同居人のドイツ人が、
早く覚えられるということは、その分早く忘れることでもあるし、
全体的に見て、その場限りなら良いけれど、将来的に曲をしっかり弾きたいのなら
自分の力で取得した方が長続きして得なのでは・・
と冷静な判断を下していたその考えに
大まかには同意している自分を発見しています。

日本にいて嬉しいことの一つが
季節がゆっくりと変わっていく様子が味わえることです。
3月20日には横浜市立都筑図書館にて、
「春」の本をテーマにした小さなコンサートをします。
(当日先着30名 他ビブリオバトルも同時開催)
日本とヨーロッパの春の違いなど、
様々な角度から「春」をとらえたプログラムにできたらと
今からわくわくしています。