メールマガジンvol.9
2019年10月

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本当に久しぶりにメールマガジンを書いています。

というのも昨年夏より、通訳・翻訳のレベルアップを目指し、プロを対象にした英語専門コースに通い始めた
のは良いものも、日英、英日、どちらを訳すにしても徹底して、元の文、文脈を読み込み、内容を把握し、自分
なりに文章を再構築し、元の文体を踏襲しつつも、筆者の言いたいポイントを正確にわかりやすく伝える訳文を
考える、という行為を繰り返しているうちに、自分の書く文章がまあなんと主語があいまいで、どこに帰結するのか
わからず、ひたすらに長く続くことに今更ながら驚き、これは一番訳者を困らせる文章の作りであり、もし自分に
この文を訳せとまわってきたら、もっと文章は簡潔に!言いたいことはわかりやすく副詞と形容詞を多用せずに
動詞で表せないのか!と怒り心頭になるに違いないと思いつつ、そしてくせになってしまった文章を見返すという
作業をし始めたら最後、文章はいっこうにまとまらなくなり、勢い込んでやり始めた本棚の整理が、途中でこの
やり方で正しいのか途方に暮れ、乱雑化する一方の本の山を横目に整理自体を放棄してしまうように、書きかけの
文章の山(残骸)に埋もれる状態が続いていました。(この一文も、訳者の観点からみると、反則もののような作りです)
今年の夏で英語の勉強がひと区切りつき、前よりも訳文がスムーズに思い浮かぶようになって余裕が出てくるように
なってきら、不思議なもので自分の文章もまあいいいかと、そして結局自分はこのようにしか書けないのだし、それに
訳す需要は全くないのだから、ゴーイングマイウェイだと思えるようになって、文章が進むようになりました。

と前置きが長くなりましたが、夏が終わり、空が、光を吸収した薄いベールのような雲と、空の果てまで見通せるのでは
ないかと思うほど透き通った水色を纏い始め、公園にトンボが飛ぶようになると、ああ秋の匂いがやってくるなと嬉しく
なります。
私のお気に入りの秋の匂いは、ウィーン時代は週末によく訪れていたウィーン郊外、牧草地の丸められた干し草が
乾燥して香ばしくなる匂い、ロンドンでは、家の前の道の向こうから始まる広大な公園に広がるアスター(エゾギク)の
花の、薔薇やラベンダーとは違う鼻腔をやさしくくすぐるようなほんわかと甘い匂い、そして世界中どこでも木立さえ
あれば、秋が深まるほど強くなる、落ち葉が重なり、しめって発するツンとした匂いが何より大好きです。
干し草に関していうと、私がなんとか仲良くなって颯爽と乗りたいと奮闘していた、牧場のサラブレッド、Mr.コナンが
大の干し草好きで、乗馬中干し草のところにくると必ず止まって、私がいくら手綱を引っ張って制止しても、頭を下げて
干し草の束に頭をつっこみ夢中で動き回るので、上の私は何度も振り落されるという、あまり有難くない思い出もあり、
またアスターの花自体はちょっと派手すぎてあまり好きになれないし、道端の脇に忘れ去られた湿った落ち葉のくすんだ
色は、今年も終わりに近づいている現実を否応なく教えてくれるし、匂いへの想いは、その本体よりも、匂い自体に魅力を
感じるということなのかと考えたり、そしてその匂いは、思ってもみない感情を刺激するのはもちろん、メロディーだったり、
色だったり、誰かの表情だったり、様々な心動かすものを運んできてくれる媒体であり、春も匂いの季節ですが、秋が
プロデュースする秋の様々な匂いは格別だと毎年思います。

 横浜市主催の横浜音祭り一環として10月22日(火・祝)に横浜山手イギリス館で行う「Violin Infinity」ではヴァイオリンの音と
写真、絵、詩、三味線、アロマとのコラボで、耳と他の五官を同時に刺激することで新しいアート、音楽空間をつくることが
できればと思っていますが、詩とのコラボはイギリスの詩人キーツの「夜のナイチンゲール」の朗読を予定しています。
実はキーツの詩も私にとって秋の詩で、これはロンドンの家から公園を通り抜け丘をのぼるとキーツハウスという、
病弱だったキーツが療養した家があり、夕方アスターの匂いに包まれながら、公園をのんびりと通り抜け、キーツハウスで
催されるキーツの詩の朗読会に行くのが、楽しみで(そして黒ビールを飲んで帰る)、秋→アスターの匂い→キーツの詩と
つながり、よし、25歳の若さで結核で亡くなったキーツのロマンティックな詩を秋の山手の丘で吟じ、奏でるのも良いのでは
ないかと、ロンドンではよく催される詩と音楽のコラボレーションがを日本でもぜひと願い企画したこのイベント、他にも自然を
とらえたモノクロ写真、アプストラクトなようなリアルな不思議な絵、そして和の弦楽器と言えば津軽三味線、アロマとコラボは、
皆さんにアロマをかぎながら演奏を聴いてもらい、自分のことを少し探ってみられるかもしれない試み等、バイオリンの音と
共に他のアート、文化からの多様なイメージが膨らみ、又ちょっと新しい感覚を呼び起こすようなパフォーマンスができたらと
願っていますので、秋の夜長に山手の丘に足を運んでいただけましたら幸いです。

詳細
http://itokanoh.com/info.html

♪横浜音祭り 「Violin Infinity」
Violin 加納伊都 × 絵・写真・詩・三味線・香り
10月22日(火 祝) 19:00〜
横浜山手イギリス館
3000円 飲み物付き
問い合わせ/加納伊都リサイタルオフィス info@itokanoh.com
Web: http://itokanoh.com/info.html
FAX:045(621)6423
住所、氏名、メールアドレス(電話番号)
希望座席数を明記の上お申し込みください。