Programnote 2004

- - 加納伊都ヴァイオリンリサイタル - -

曲名をクリックすると約30秒間視聴することが出来ます。
注:WMA ファイルが再生できる環境が必要です。

F.シューベルト
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
  通称「ソナチネ」第2番イ短調 OP137-2

第1楽章 アレグロ・モデラート イ短調
第2楽章 アンダンテ ヘ長調
第3楽章 メヌエット アレグロ ニ短調
第4楽章 アレグロ イ短調
前期ロマン派に属する、ウィーン生まれのフランツ・ベーター・シューベルト(1797〜1828)は<野ばら>や<魔王>などで知られる歌曲作家として位置づけられている。31歳10ケ月という短い生涯の間に145曲もの歌曲を残した。彼の才能は美しい旋律と豊かな調性感、そして自在な転調などによる流動性と叙情性にあり、ベートーヴェンのような大作を生む構築性には無縁であった。
この「ヴァイオリンとピアノのためソナチネ」は演奏時間15分という4楽章形式になっているが、第1番のソナチネよりは全体に規模が大きくなっており、彼の才能を遺憾なく発揮した曲ある。

*シューベルトはその短い生涯の後半を梅毒に苦しみ、それが死因になったともいわれていますが、この曲が作曲されたその時期に初めて  発  病したそうです。当時の梅毒は今のHlVと同じく不治の病といわれており、4楽章など美しいメロディーの中にも病気へのやるせなさとど  こと  ない疲れが伝わってくるような気がします。
J.ブラームス
ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 OP108
第1楽章 アレグロ ニ短調
第2楽章 アダージョ ニ長調
第3楽章 ウン・ポーコ・プレスト工・コン・センティメント 嬰へ短調
第4楽章 プレスト・アジタート ニ短調
ヨハネス・ブラームス(1833〜1897)の作風は、ドイツロマン派の中でも比較的保守的な傾向を見せており、一般に新古典主義の作曲家とも言われている。ドイツの民謡や、ハンガリーのジプシー音楽の語法を研究し、ロマン主義文学の影響や生来の詩情とによる独特の重厚な作風が特徴としてあげられる。
その中で、3つのヴァイオリン・ソナタは、室内楽曲中の大傑作として知られ、この3番のソナタは、内燃的な渋い抒情性や言帝観を出していて、晩年にいくにつれ人間の宿命を目の当たりにしていくブラームスの内省的な性格が複雑な対位法、複リズムと相まって、重厚な彼特有の風格を示している、演奏時間30 分強の大作である。

*先日読んだ詩の中に「ブラームスは樫の木のような音楽をつくった。そして、我々の世界の影を濃くした。」という一節があり、本当にその通  り  だと、とても感銘を受けたのですが、そんなブラームスの深く陰影に富んだ曲想が表現できたら良いなと思っています。
06年
C.ドビュッシー
ヴァイオリン・ソナタ
第1楽章 アレグロ・ヴィーヴォ
第2楽章 間奏曲 ファンタスク・工・レジェ(気まぐれに、軽快に)
第3楽章 フィナーレ トレ・ザンメ(非常にいきいきと)
クロード・ドビュッシー(1862〜1918)は印象派を代表するフランスの作曲家である。
印象派とは、絵画の印象派から来たもので、従来の形式や調性にこだわらず、光や色彩をふんだんにとりいれ比較的自由に表現した、19世紀末から20世紀初頭にかけて主にフランスで活躍していた一派で、ドビュッシーはそのなかでも非常に重要な位置を持っている。
このヴァイオリン・ソナタは、事実上ドビュッシー最後の作品に当たる。しかし、とても晩年に書かれたとは思えないほど、曲想の変化がめまぐるしく、スペイン風な色彩に満ちた楽想、ブルースを思わせる旋律など、様々な要素がいたるところに折りこまれている。特にフィナーレでは、彼自身が「自分のしっぽを喫む蛇のようにぐるぐるまわる楽想の単純な遊び」といったように、さまざまな変化をみせながら、活気を帯びて終結する。初演は、1917年、ドビュッシー自身のピアノで演奏された。
F.クライスラー ウィーン風小行進曲
フリッツ・クライスラー(1875〜1962)はウィーン生まれの偉大なヴァイオリニストであり、作曲家。また大学では医学を修めた。
技巧的で美しいヴァイオリンの小品を数多く残し、今ではコンサートに欠かせないレパートリーの1つとなっている。
この曲は名前の通り、ウィーン風のお酒落な行進曲として多く演奏され、親しまれている。
M.ラヴェル
ヴァイオリン・ソナタ
第1楽章 アレグレット ト長調
第2楽章 ブルース モデラート 変イ長調
第3楽章 無窮動 アレグロ ト長調
モーリス・ジョゼフ・ラヴェル(1875〜1937)は、ドビュッシーと並びフランス印象派の代表的な作曲家として知られている。
その作品は、ドビュッシーの<色彩和音>を強く表面に出した手法に対し、そのような和音を、素材や手段として使用したに過ぎず、知性と敏感な音感覚により、印象主義的・古典的構成を重視する作風を示している。
このヴァイオリンとピアノのためのソナタは、テンポについてはかなりクラシックな設定による3つの楽章からできている。
ラヴェル自身が『本質的に相容れないピアノとヴァイオリンという楽器の対比を通じてお互いの均衡をはかり、このソナタを書くことにより、まさに相容れない面を強調している』と残しているように、線の意匠と複調性のうちに思いがけぬ響きの結合を生み、敏感な音彩としなやかな美を実現している。また2楽章では、「ブルース」を頂点として、ジャズへの関心が強くうかがえる。

*ラヴェルは、このソナタの1楽章をイギリスにむかう船の中で思いつき、フランスへのなつかしさ、特に田舎の農場の風景を思い出しながら  作  曲したそうです。ところどころに烏のロ鳥き声を思わせる旋律など、弾き手、そして聴き手を楽しませてくれる1曲です。
C.サン=サーンス
序奏とロンド・カプリチオーゾ
カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921)は、モーツアルトにも似た神童型で、子供の頃から天才ぶりを発揮していたが、大人になっても、作曲、演奏活動の他に、詩人、画家、哲学者、そして天文学者として知られていた。
この序奏とロンド・カプリチオーゾは1870年に作曲され、その2年後、当時の偉大なヴァイオリニスト、パウロ・サラサーテによって初演された。静かな導入部と華やかなロンド部分、かなりの技巧を要する難曲である。

*この曲は、よくコンクールなどで演奏され、ヴァイオリニストの腕の見せどころといった曲になっていますが、本当は相当ロマンティックな大人の  為のアフター5の楽しみのような曲なのではないかと思います。
文/加納伊都
- アンコール -
アメイジング・グレイス
浜辺の歌


Piano 山本聡子