Programnote 2003

- - 加納伊都ヴァイオリンリサイタル - -


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F.クライスラー プニヤーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ
フリッツ・クライスラー(1875〜1962)はウィーン生まれの20世紀前半を代表するヴァイオリニストであり、作曲家。
ウィーン趣味にあふれた小品を数多く残した。
前奏曲とアレグロは、18世紀イタリアの大ヴァイオリニスト プニャーニのスタイルを模して作曲された作品。中間にアンダンテの部分を含んだ、アレグロの力強い前奏曲で始まり、続いて、アレグロ・モルト・モデラートの活気ある主題があらわれ、重音奏法などを加えてクライマックスに向って、盛り上がっていく。
イタリアンバロックスタイルを巧みに模した華やかな小作品である。
W.A.モーツアルト ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 W3044
第1楽章 アレグロ
第2楽章 テンポ・ディ・メヌエット
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、1756年オーストリアのザルツブルグに生まれ、1791年、わずか35歳の生涯を閉じた。
幼い頃から神童として知られ、7才から本格的な作曲活動を開始した。ピアノだけでなく、ヴァイオリンもよく弾きこなし、非常に多くのヴァイオリン・ソナタを残している。モーツアルトはその生涯の大半を旅行のうちに過ごしたが、このヴァイオリン・ソナタ28番も、旅行先のマンハイムで着手され、パリで完成された。
ヴァイオリン・ソナタの中で、唯一短調の作品であり、すでに健康を損ねていた母の死を予告するような異様な緊張感と暗さをただよわせている。しかし、2楽章で、憂愁を帯びた主題が華やかに繰り返されるなど、モーツアルトらしい、美しい作品に仕上がっている。
06年
C.ドビュッシー ヴァイオリン・ソナタ
第1楽章 アレグロ・ヴィーヴォ
第2楽章 間奏曲 ファンタスク・工・レジェ(気まぐれに、軽快に)
第3楽章 フィナーレ トレ・ザンメ(非常にいきいきと)
クロード・ドビュッシー(1862〜1918)は印象派を代表するフランスの作曲家である。
印象派とは、絵画の印象派から来たもので、従来の形式や調性にこだわらず、光や色彩をふんだんにとりいれ比較的自由に表現した、19世紀末から20世紀初頭にかけて主にフランスで活躍していた一派で、ドビュッシーはそのなかでも非常に重要な位置を持っている。
このヴァイオリン・ソナタは、事実上ドビュッシー最後の作品に当たる。しかし、とても晩年に書かれたとは思えないほど、曲想の変化がめまぐるしく、スペイン風な色彩に満ちた楽想、ブルースを思わせる旋律など、様々な要素がいたるところに折りこまれている。特にフィナーレでは、彼自身が「自分のしっぽを喫む蛇のようにぐるぐるまわる楽想の単純な遊び」といったように、さまざまな変化をみせながら、活気を帯びて終結する。初演は、1917年、ドビュッシー自身のピアノで演奏された。
F.クライスラー 美しきロスマリン
ウィーンの古い民謡による三部形式のワルツ。
「愛の喜び」「愛の悲しみ」と共に、ウィーン三部作として、よく知られている。
「ロスマリン」とは、香り高い花を咲かせる「まんねんろう」という、花の名前だが、この場合は、愛らしい少女の愛称。
クライスラー風の甘美でかろやかなメロディーが清らかな乙女の面影をにおわせる
R.シューマン ヴァイオリン・ソナタ第1番
第1楽章 アレグロ・アパッショナート“情熱的な表情を持って”
第2楽章 アレグレット
第3楽章 アレグロ・ユン・ブリオ“生きいきと”
ロベルト・シューマン(1810〜1856)は、ドイツ・ロマン主義を代表する作曲家で、その生涯で2つのヴァイオリン・ソナタを残した。
共に、同じ1851年、シューマンが40代の時、すでに精神の病がかなり進行していた時期に書かれており、その病の苦しみや呻き、叫びが曲を通して、漏れ聞こえてくるようだ。
またシューマンは、ヴァイオリンのことをよく知らなかったのではと思うほど、ソナタにしろ、協奏曲にしろ、非ヴァイオリン的な音域で作曲されているにもかかわらず、その旋律に、語るべき内容が重くしっかりとつめこまれているので、ヴァイオリニストにとっては、体力も精神力もかなり要求されるやっかいな作品である。
しかし、まだこの1番の方が、簡潔でひきやすく、1楽章の抒情的な第1主題、詩情味あふれる2楽章、作曲者の情熱的な感情がこぼれ出てきそうな3楽章と、ロマン的でかつ力強い作品となっている。
M.ラヴェル ツイガーヌ
モーリス・ラヴェル(1875〜1937)もドビュッシーと同じく印象派を代表する作曲家。
「ツイガーヌ」とは、ツイゴイナー(ジプシー)の、フランス語でつまりこの曲は,「ツイゴイネルワイゼン」と同じく、ハンガリーの民族音楽を素材としたジプシーの音楽であり、形式もチャールダッシュ形式を用いている。
カデンツァ風のヴァイオリン・ソロ部分に始まり、後半は、ピアノを伴って、主題が幾重にも変奏され、クライマックスをむかえる。ジプシーの暗い歌を連想させる、ソロ部分といい、後半の速い部分といい、さまざまな技法が要求される。
ヴァイオリニストにとっては至難の曲である。
文/加納伊都
- アンコール -
アヴェマリア
サマータイム


Piano 柳澤ひかる